OMソーラー

udf2004-08-23

完成した住宅のHPアップ準備が仕事に追われて出来ないため、少し材料の整理を始める。
今回は独立後初めての仕事となった、d-projectについて。基本設計はクライアントで実施設計のみを受けることとなったもの。
構造はRCの3階建てで延べ面積が200㎡弱。特徴は、クライアントが環境に深い関心を持っている関係で、パッシブソーラーをテーマとしていることと、ご高齢のご両親との2世代住宅と言うことも有り、ユニバーサルデザイン。この2つがこの住宅の骨格となっている。ちなみに、ユニバーサルデザインの部分は、8月14日の日経新聞プラスワンの5面「楽住快居」の欄に掲載されている(フォトジェニックで無いのが残念)。
パッシブソーラーはいろいろな手法があるが、現在のところ最も理論的にもシステム的にもしっかりしているのは、OM協会等のものと考えられる。「等」と言うのは、OMグループは3つの組織体から成立しているため。

OM研究所」(目白の旧吉村順三事務所に本拠を構えている。宮脇壇氏や中村好文氏が図面を書いていたわけであるが。1階は吉村順三記念室みたいになっていて、今もかの有名な応接室を見ることが出来る)は設計部門をサポートする。駅からの途中に、「古道具坂田」があるが入りにくい。URL http://www.passivedesign.com/ <経営上の問題か?旧吉村順三事務所は、建築家N氏が2階を使い、1階と3階は記念館的な使い道になっているようだ。OM研究所は近くのワンルームマンションへ移転したらしい(すでに1年になるような・・・)。2006.10.19>

OM計画」は公共建築など規模の大きなプロジェクトをサポートしているようだ。郵政の建築はサスティナブル建築の試行をかなり積極的に取り組んでいたが、その時には「OM計画」にも協力を依頼していたようだ。インターネットを見て、普通はコンペの事業を特命で中国から受けていたので、実力はあるのだろう。URL http://www.omplan.co.jp

OM協会」は、OMソーラーの施工を行う施工会社の組織となっている。OMのシステムを施工するためには、この協会に加盟していることが原則的に、必要となっているようだ。URL http://www.omsolar.co.jp

そもそも、OMとは何かと言うことになるが、「OM」はこのシステムの発案者である奥村昭雄氏の頭文字*1
原理はきわめてオーソドックスなパッシブソーラーシステムで、屋根に集熱パネルを設置し、そこから得た高温の空気をハンドリングユニット(ファン)とダクトを使って最下階の床下に送り込み、床に開けた通風孔から暖かな空気を出して、吹き抜けを通して家全体を暖房する、簡単に言えばそうなる。勿論、躯体蓄熱やダイレクトゲイン(日当たりの良い窓を設置して、直接太陽光のエネルギーを建物内に取り込む)等による効果も取り入れることになるが。
吹き抜けを作った場合、空気を回そうとするのは誰でも考える。自宅の設計の時も、吹き抜けにダクトを設け、中間にパイプファンを取り付けて、床下にもパイプダクトを置き、棚受け用の金物を吹き出し口にして、サーキュレーションを試みたが、下に降りてくるまでにスパイラル管に冷やされてしまうし、ファンが小さく床から空気がほとんど出てこないという失敗に終わった。ちなみに、OMのダクトはポリプロピレン製でしっかり断熱してある。
OMのシステムを取り入れた設計をするためには、OM研究所でOMシミュレーションを行うことになる。これにより集熱パネルの枚数や、ハンドリングユニットの容量を決めることになる。このシミュレーションは設計者が行うわけだが、OM研究所で講習を受けることが必要となる(費用はン万円)。その時に対象建物の断熱性などを入力して、設計のOMに関する仕様を決める。断面設計がかなり重要と言うことになる。吹き抜けが必須なので空間的には面白いものが出来る可能性は大きい。写真は、最初に作った断面計画、と言うより断熱性チェックのための矩計スケッチ。

躯体はRCで外断熱、勿論通気層有り、内部はRC打放で間仕切りは木軸でシナ合板素地。サッシはアルミサッシの複層ガラスとしているが断熱サッシまでは使っていない。外装はメンテナンスフリーを考慮して2,3階はガルバリュウムの素地、1階はクライアントがはしごでメンテを行うと言うことで、無塗装のセメント系サイディングに外部用AEPの黒。

そもそも論になるが、東京の23区内でOMが有効かどうかはなんとも言えない。冬については蓄熱などがうまく行けば良いが、計算通りにいかないことも考えられるので、補助暖房は必要。
勿論、シミュレーションの時に、アメダスの資料など気象条件についてはかなり詳細に取り込まれはいるが。問題は夏と言うことになる。このプロジェクトの場合は、クライアントがかなり詳細に対策のメニューを作っていたのでかなり上手くいっているのではないかと思うが、それにしてもエアコンは必須となるようだ。
もう一つの決め手は、通風になる。プランニングで良く風の通り道を検討しておくこと。とは言え、我が家などは周辺を隣家のエアコン室外機に囲まれてしまい、窓を開けると熱風が吹き込むので、通風を考慮した設計も何の意味を成さないが。
それでも、住宅の設計の基本は、「陽当たり」と「通風」。日よけの方法はいくらでもあるし、風さえあれば中間期は心地よく過ごせる。
OMのコストはこの規模で概算200万と言ったところだろうか。
あまり長くなると、わけが分からなくなるので、第1回目はこのあたりで。次回は、防火規制のある場所での、外断熱のDETAILの取り扱いなどをまとめる予定。
OM研究所は自然エネルギー研究所に名称変更⇒http://d.hatena.ne.jp/udf/20071027

*1:「OM」とは「オモシロイ」「モッタイナイ」のイニシャルから命名された、というふうに言われているような節もあるが、実際のところはどうなのだろう?建築家の間では「奥村昭雄」氏の頭文字として認識されている場合が多いように思っていたが・・・。「OM」にはいろいろ組織的な問題も有るようで、個人的な印象としては、技術を囲い込んで「特別利潤」追求型のイメージが強い。そんな印象のため「OM」の名称についてこちらで誤解している可能性もある。

シロアリ・NAS

今日はほとんど仕事になっていない。
m-project 敷地が昔林だったので白蟻が多く対策が必須だが、小さな子供もいることもあり、防蟻剤の安全性についてクライアントが心配しており、スペックを確認。白蟻の被害というのは、実際に見ると仰天する。貸室ドア、水周り開口部位置の打合。夜、基礎・土台伏図の確認。2階床伏図調整。
s-project キッチンの図面修正。クライアントから話のあったNASの製品に書き換え。見積りを見たがかなり高い。壁面パネルをオプションで追加しているせいか?
キッチンのシンク周りをオリジナルで設計する機会がなかなか見つからない。m-projectの貸室はミニキッチンだがそれなりのものが出来るか・・・。住宅部分は1階が業務用の中古で2階は解体した元の家で使っていた再用品。環境に優しいからいいか。