INEX-2:山下和正

udf2004-07-31

INEXは日本の建築家がデザインしたハードウエアの中で、最初に(多分)シリーズ化されていることも含めて、特筆すべき存在だと思う。デザインは、山下和正氏。最近はあまりジャーナリズムに登場していないようだが、住宅を中心に実力を発揮した建築家。代表作?はコンクリートブロック造の夫婦の家。よく知られているのは、青山のフロムファーストビル。青山の外苑東通り沿いの、クライアントの横顔を平面にした、おかしなペガサスビルなどもある。
制作発売は株式会社オーシマだが、東洋シャッターに吸収されてしまった。オーシマは、カタログによると、昭和6年創業、船舶艤装金物専門メーカーとして市場占有率90%以上・・・。耐震・耐蝕・強度など海のハードウエアに要求される想像を絶する過酷な条件に耐えて、高度の製品を作り出し、それが陸の建築ハードウエアとしてINEXになったとカタログにある。
確かに船に使われているハードウエアーは面白いものが沢山ある。オーシマでも一時期建築家向けの船舶ハードウエアーのカタログを出していたように思う。INEXのコンセプトについては、カタログから引用しておこう。

OshimaINEXは、ユーザーの立場に立って考え抜かれた建築空間のためのハードウエア・シリーズです。建築と人間との間の接点であるハードウエアーは、建築には堅固に対応し、同時に人間に、人間の眼に、人間の手に何よりも優しい<もの>として対応しなければなりません。ハードウエアを現実化する素材は、この相反する二面の要求を受けとめ、充たさねばなりません。OshimaINEXは、ステンレスとムクの耐蝕アルミニウムを基材とすることによって、この二重性をうけとめています。・・・中略・・・すぐれたデザインと品質、そしてできるかぎりの低価格、ハードウェアにとってこの当たり前の目標は、しかし、一歩もゆずれません。この当たり前の目標を実現することが、OshimaINEXの特性のすべてです。

その割には、結構高価格帯に属するのではないかと思う。デザイン的にはなかなか良いのではないかと思っている。ドアノブも結構「人の眼に」はアピールする形をしている。握りやすいかは別問題だが。使ったことがあるのは、ツマミと内締棒、両方ともチョット変わった使い方をしたが、それはまたの機会に。
写真のカタログは、1977年のもの。大きさは850mmx530mm程度で、やはりかなり大きい(例によって右下に置かれているのは、30cmの三角スケール。表に製品の写真とサイズ、裏には線描きされた製品とスペック。デザインが山下和正であることは、右下に天地2mm程度の文字で書かれている。
MODRICと違って、床に製品を並べて写真に撮った感じ。photo:S.Mikoshiba、コーポレイト・デザイン:ペーパースタジオ、とポスターカタログに書いてある。
ちなみに現在のINEXのカタログは、A4判のパンフレットになっている。