宙吊のロボコップ

udf2004-09-28

10月1日オープンの銀座交詢社ビルを見る機会を得た。8月中旬に交詢会については少し書いたがhttp://d.hatena.ne.jp/udf/20040818、その後日談。交詢ビルディングは地上10階建て。地下1階から2階までが「バーニーズ ニューヨーク銀座店」3〜5階が店舗(結構高めの設定らしい)、6〜8階が事務所(すでにテナントは全部決まっているとのこと)、9,10階が交詢社と言う構成になっている。詳細は三井不動産のHPで(http://www.mitsuifudosan.co.jp/home/news/040816.html)。 地下1階から6階までを三井不動産が取得することになった、とHPに書いてあるが、そう言うことになるのだといまさらながら寒心している・・・。
見学は9,10階のみだが、それで十分な感じがする。伊藤某なる人物を含む委員会で、保存の形態を検討したらしいが、その結果がこの形と言うことなのだろう。どのような議論が行われたのかわからないので、なんとも言えないが、この手の委員会は全く当てにならない、とよく言われているがこの場合は如何だったのか。・・・この委員会に参加している、横河健氏のコメントが有るので興味のある人は見て欲しいが、どうも委員会自体の問題以前に、いろいろあるようなことになっているようだ・・・?http://www2.ktarn.or.jp/kurume-u-hp/nakatsu/yokogawa.html
中庭・談話室・小食堂を保存する条件で容積を100%緩和されている。新しい建物を透明なアクリル模型で作って、保存された部分をリアルな模型で作ったとしたら、ばらばらに解体された「交詢社」が地上3〜40mに宙吊になっているようなことになる。
保存されている部分と、新しくデザインされている部分の質の違いは如何ともしがたい。
新しくするのなら「新しデザイン」にすれば良いのだろうが、下手にイメージを残すなどと考えているので、きわめて中途半端。かといって、昔の様式で復元するのも難しいのだろう。特にコスト・技術の点で三井不動産の体質では無理があるのだと思う。見学させてもらってこのような印象を持つのは、申し訳ないと思うが。
建築的にはやはりこの外観はどうしても良いとは思えない。セラミック焼付けのガラスを使っているが、これもどこか中途半端。建築のデザインで「中途半端」は大敵。多分、ある程度外部から視線をさえぎらないと、店舗部分も交詢社部分も内部と整合性が取れないのだろう。
9,10階のあちらこちらに、ベイウィンドウなど古い建具が使われているが、それが見えてしまうのもまずいし、物販には窓は不要と言うこともある。
外被は基本的にダブルスキンになっているが、今まで行われているようにスキンの中間に空調を入れていない。これは空調することでメンテナンス上、内部のスキンを開閉しなければならないが、建具に膨大なコストがかかるため、空調をやめて内外FIXにしている。
ピンホール的な開口で外部と結ぶことで、結露などの対策は十分だそうだが・・・。
建築と言うものが街並みの一部を形成し、個々の建築がその街に流れていった時間の蓄積を表現するものであるとしたら、今回の保存は失敗である。容積アップのために保存された交詢社の中枢は極限られた会員にのみ開放され、万人のものだった外観は「マスク」一片が残されたのみなのだから。このような建築計画に何も異議を挟まなかったとしたら、都市計画家と言われる伊藤某氏の資質を疑わざるを得ない。強く異議を唱えた、と思いたいが・・・。
帰りに、交詢ビルの近くの「西銀座ビル」と言う、昭和初期(?)の建物で、もうそろそろなくなるのではないかと思われるような、スクラッチタイルと洗い出しで外部を覆ったビルの、これまたずっと時間が止まっていたような地下のcafe・barでしばし休憩。