建築家と建築士と名刺

udf2005-01-04

ダイナースクラブの雑誌「SIGUNATURE」に「暮らしの見立て」と言うコラムが連載されている。書いているのは安田幸一氏。不勉強で知らなかったが、あの仙石原のポーラ美術館(http://www.polamuseum.or.jp/) の設計担当者。
日建設計の組織のことについては良く知らないが、かなりヒエラルキーがはっきりしているのではないだろうか。大きな組織と言うのは大概がそうであるように、設計者→設計担当者→スタッフ・・・。
飯田橋の事務所の会議室はかなり「凄い!」。これが日本最大の設計事務所の会議室かと感心したものだ。
それは余談。表題の「建築家」と「建築士」その違いはどこにあるのだろうか?これはまともに考え始めたらちょっとやそっとでは終わらない。
「日本建築家協会」と「東京建築士会」の両方に席を置く身としても、一度考えておかなければならない問題だが。ある意味「どうでもいいか」と言う問題であるかもしれないが・・・。
安田氏も言っているとおり、最近一般雑誌に「建築」が取り上げられることが非常に多くなっている。雑誌に限らずTVにもやたらと「建築」が取り上げられる機会が増えている。
TVにしても雑誌にしても「売る」ことを第一に考えられているので、「・・・の達人」とか変な名称を使っているものもあるが、そう言う「視聴率・売り上げ」だけにしか目が行っていない「業界」は別にして、職業の名称と言うのは面白いことが沢山ある。
さすがに建築家・建築士はまだカタカナ職業にはなっていない。インテリア関係だけがなぜカタカナ職業なのか、これはこれで不思議な気がするが。
安田氏のコラムの一部を紹介しておく。

(雑誌に自邸が紹介されたときの話として)
・・・他の設計者は「建築家」と肩書きが付けられているのに、私の名前の横だけ「一級建築士」と言う肩書きが添えてあったのだ。「会社の勤め人は一級建築士と呼び、独立して自分の事務所を持っている人は建築家と呼ぶことにしています」と編集者は定義付けたうえで、当時サラリーマンアーキテクト(お、カタカナ職業)だった私に懇切丁寧に、また少しだけ申し訳なさそうに説明してくれたのである。
大辞林ではこう説明してある(何故、広辞苑ではないのだろう?)
【建築家】建物の設計や工事の監理などを職業とする人。
建築士建築士法に基づき、建築の設計工事監理などの業務を行う者。
・・・

この後、「士」と付く職業や「家」と付く職業の例を挙げて、そのイメージについて書かれているが、そのあたりはほぼ一般的なことが書かれているので省略。
基本的には、法律に基づくかどうかで呼び方が変わっているだけといった感じだ、がそれはある意味正しいが、ある意味違っている。このあたりになるとまあ、弁証法そのもの(?)見方によってそうでもありそうでもない・・・。
しかし、実際にはその名称によって2つの「大きな」組織が存在するのであるから、名前も大事なことではある。
特に現在の「日本建築家協会」は組織事務所の力が大きく働いている。組織事務所は先ほども書いたが、ヒエラルキーの厳しいところと聞いているし、沢山の所員の生活を保障するために「本来の建築家」としては「如何なものか」と言うこともやらねばならないこともあるようで、安田氏のコラムにある編集者の「定義付け」はかなり本質を突いているのではないかとも思える。単に法律に基づいた使い分けでもないような気もする。
お互いが自由で平等であるべきはずの建築家同士の組織で、「ヒエラルキー」を振りかざすようなことをされてはたまったものではない・・・。
これをいろいろ考えていくと、石山修武氏vsトムヘネガン氏の二つの「教育論」にも結びついていくような気がするのだが・・・。
そういえば、大学の教師建築家はどうかといったこともあって、名称問題は面白い。
今日の題の中の「名刺」問題に到達しなかったがそれはまた機会を改めて書こう。