C+A

udf2005-02-22

シーラカンスが2001年のプロポーザルで設計者になった、「戸田市立芦原小学校複合施設」がほぼ完成したので、東京建築士会が見学会を行った。2時から4時少し前まで、「C+A」担当の佐藤氏と清水建設の阿部氏の案内で建築の内外を見学。
プロポーザルの詳細は、日経アーキテクチュア2002年1月7日号等に詳しく載っている。
審査委員長は故内井昭蔵氏(当時滋賀県立大学教授),審査委員は中村勉氏(中村勉総合計画事務所長),藤木隆男氏(芝浦工業大学教授)ほか。
プロポーザルには76社が参加し、書類審査で10社に絞られて公開ヒアリングを行った結果、「C+A」が最優秀案となったらしい*1
10社に残ったのは,アルコム,香山壽夫建築研究所シーラカンスアンドアソシエイツ,スタジオナスカ,日本設計,野沢正光建築工房,山下設計,山本・堀アーキテクツ,山本理顕設計工場,湯澤建築設計研究所。
「C+A」案は設計要旨によると、

1.アクティビティを喚起する空間
次世代型の新しい小学校として「拠点となる空間」と「可能性を拡げる空間」の組み合わせからなる学習空間を提案します。拠点となる空間には新しい出会いと可能性を感じさせる自由な雰囲気を持たせます。
2.多様な屋外空間
グラウンドだけでなく、各所の施設入り口に利用者を導くパス*2、低学年教室の南側に落ち着いた前庭、特別教室の屋外ワークスペースともなる2階の中庭、3階の教室間に挟まれたテラス、屋上庭園、ビオトープと、様々なレベルにそれぞれ性格の異なる屋外空間を設けます。活動の場であるとともに、子供の心に残る場所でもあります。
3.地域に開かれた小学校
生涯学習施設を複合し、地域連携を積極的に行う施設として、講演や公民館のように内部の活動が見える、周囲に開いた施設とします。また可能な限り、生垣や低木の植栽帯等、樹木を用いた施設囲いとします。区画整理後の新しい街並みの構成要素として、景観形成の先導的役割を担います。
4.バリアフリー
車椅子や一時的に怪我をした児童にとっても、自由度の高い段差のない空間とします。各階の移動ができるようにエレベーターやスロープを設置します。
5.安全性
子供たちの活動を担保する上で、安全性が確保されていることは重要です。パスの入り口に事務室や職員室等の大人の滞在するスペースを配し、不審者の侵入に対応します。パスの交差点には校長室を配しており、これらの管理諸室からパスを見渡せることで、自然に見守られているという安心感が生み出されます。

上の設計要旨は、見学会で配られたもの。
全体の構成は、中庭とパスを組み合わせた中にアリーナを取り込み、1階はパスを中心に低学年のホームルームと複合施設,2階は中庭をコの字型に多目的教室*3が取り囲み、3階に中・高学年のホームルームが配置されている。屋上はプールは別として、ビオトープ太陽電池・勾配屋根緑化等々さながら環境施策のショウケースのよう。
基本的にオープンスクール形式で、学年ごとにまとめたホームルームにはクワイエットルームやラウンジなど学習内容に対応した様々なしつらえが用意されている。
防犯性能を高めるためにもうけた,パス交差点の校長室はまるでショウウインドウあるいは金魚鉢のようでなんとも落ち着かない。校長室に呼ばれてしかられる生徒や先生がさらし者になるのでは・・・。その時はブラインドを下ろすのだろうが、ブラインドが閉まったままの校長室にならないと良いと思う・・・。
「C+A」のホームページに芦原小学校の頁も有りました⇒http://www.c-and-a.co.jp/index.htm
ゾーニングが外観に表現されたデザインは流石!外壁の円錐形(先は丸いが)の打放テクスチャーは金型で成形した発泡スチロールを方枠に張ったもので、スペーサーや鉄筋溶接の養生など随分と苦労したようだが、楽しいデザインになっている。内部で「目から鱗」といえば、コンクリートで出来ている洗面台のdetail。コンクリートに塗装をしただけで、シンクの部分はモザイクタイルが張ってあり、小口はそのまま見せている。ローコストで格好良い。
トップの写真は屋上にある学校名板。かなり大きく、埼京線からも見えるのではないだろうか。学校自体は、埼京線北戸田駅の東京よりで大宮に向かって左側に位置している。

*1:次点は香山壽夫建築研究所

*2:廊下の幅の広いもので基本的には動線処理空間だが広場的な性格も併せ持っているように見えた。

*3:クラスルームと同じようにオープン型で料理教室もオープンな空間で他の特別教室と空間的につながっている。楽しそうだが機能的に成立するのだろうかとやや疑問。