hhstyle.com annex

udf2005-03-22

原宿キャットストリートに面する妹島和世氏設計のhhstyle.comはすでに有名だが、一軒間をおいて安藤忠雄氏設計のannexが完成間近となり、すでに仮囲いが外れて全容を見せている。
トップの写真はエントランス付近で、ほとんど黒く塗られたコンクリートのトーチカのよう。安藤忠雄氏らしい打放は、右手の奥にある業務用のエントランスらしき部分に見られるのみ。
内部は良く見えないが、どうやら打放のように見える。なぜ外部が打放でないのかは分からないが、ショップとしての断熱性の問題とか、形態*1から来る仕上げの選択なのかもしれない。
hhstyle.comの二つの建物はガラスのファサードと黒いコンクリートファサードと言うことになったようだ。
バリケードの向こうに樹木を何本か見ることが出来る。樹種などは確認してこなかったが、小さな広場状の空間を持っているようだ。
キャットストリートに面する建物で前面に樹木を伴った空間を持つ建物は無いのではないか?
参道に近いスタバの方に曲がる角の付近に、庭でグリーンを販売するcafeがあったが今はそれも形を変えているようだ。
この小さな空間が今回の安藤忠雄氏の建物の「Identity」になるのだろうか。黒い建築と樹木を伴った外部空間の組み合わせがテーマなのかもしれない。

外部空間を「Identity」にする手法について少しまとめておこう。
10年以上前になるが、甲州街道に面した「調布郵便局」を設計した時に、幸い用途地域建蔽率の関係から局前に広場を設けることが出来た。そこには甲州街道ケヤキ並木を引き込むような形で、ケヤキを植えて広場としたが、大野富司氏の唱える「EI手法」*2を参考にした。
当時の「商店建築」に特集された、大野富司氏の記事の概要は以下のとおり。
「地域環境整備に着目した新たなイメージ戦略」と言うことになる。

企業の社会的役割の認識とか地域社会への貢献といった側面から企業のありかたを考え、都市の再生や地域環境の整備にその努力やコストをふりむけたほうが、企業のグッドウイルや企業イメージを育てるうえで、はるかにプラスになるという考え方。
それは周辺地区のひとびととの空間の共有という条件をぬきにしては成り立ちにくい。VIが地域をこえたベーシックな表示要素の標準化傾向をもつことによって、その差別化や視認性を高めようとしているのに対して、その地域特性のうえに企業の個性を重ねることによって、その独自性や先見性、地域社会との融和性や共栄性などを示していこうとするところに大きな特色がある。

この記事が掲載された頃はまだVI*3を中心としたCI隆盛の状況だったので、地域に開かれた空間をIdentityとする手法は新鮮だった。大野氏の提唱する「EIの構成手法」は以下のとおり。

①ランドユースを考える・・・オープンスペースやビル内公共空間の設定、境界の解消。
②空間の装置を工夫する・・・内外空間を媒介する自由な緩衝空間の設定、人の流動の促進とたまり場的空間の設定。
③自然を感じさせる・・・緑・水などの自然の要素の導入と回復。
④景観を整える・・・外部空間との連続性の維持、周辺グリーンとの調和。
⑤人をひきつける・・・落ち着く、おもしろい、開放感、利用しやすい、雑踏などの魅力づくり。
⑥情報を分かり易くする・・・情報量の抑制などのコントロール、周辺環境情報システムとの連動。

当時の例としては、「旧三和銀行」の本社前、日比谷の「旧大和證券?」の広場、村野藤吾の「ダイビル」を壊して建て直したビルの広場など。

*1:屋根がそのまま壁に繋がっている:汚れをどうするのか?安藤忠雄氏のことだからきっと、「目から鱗」の対策を講じてあるのだろうと思うので、そのあたりのコメントを早く見てみたい気がする。

*2:Enviromental Identity

*3:Visual Identity