TOTO通信

udf2004-09-24

以前フリーマガジンの面白いものとして、東急の「SALUS」と地下鉄の「metro min.」のことを少しメモしたが、今回は建築系のフリーマガジンとも言うべきものを、少しメモしておく。
今日は東陶機器株式会社の広告誌「TOTO通信」。昔はどちらかと言うと単なる宣伝用のぺらぺらなイメージのものだったが、10年ほど前から激変した。
TOTOの戦略は知る由も無いが、編集制作に中原洋氏を迎えたことが激変の原因。ある年齢以上の建築関係者であれば多分記憶があると思うが、「BOX」と言う雑誌に「意地の都市住宅」と言うレポートを連載していた人。
植田実氏の「都市住宅」の時代が終わり、よりビジュアルな方向に建築ジャーナリズムが向かって行った頃の、比較的「大衆的」であり、「専門家」からは「マイナー」な部分の、先頭を走っていた人ではないかとも思うのだが(評論家ではないのでよく分からないが)。この連載記事は後に、ダイアモンド社から2冊分冊で出版されたが高くて買えなかった・・・。当時の職場には2冊揃っていて一生懸命見たものだった。
ちなみに当時のBOXの切抜きが数号分手元にあるが、若き日の椎名英三氏の傑作コートハウス「木邨邸」などが載っている。
中原氏の上手さは、グラフィックや頁構成のセンスの良さで、つい見てみたくなり、尚且つ読むのに「苦労しない」ところ、一言で言えば、「ビジュアルでとっつきやすい」。
中原洋氏のURLは、http://www.o-n.ne.jp/ HPより一部を引用した。

毎月たくさんの建築------とりわけて住宅をはじめとするさまざまな作品を拝見しています。仕事半分、勉強半分です。おかげさまで学ぶところ大です。これはうれしいことです。その折角の喜びをみなさんにお裾分けしたいとこのホームページを開きました。
新しい建築へのアプローチが好きです。建築への冒険、新鮮な建築空間の発明を見たいのです。と言っても、ここにご紹介する写真は素人のもの。解説というか説明というか、感想というか、それもこれもすべて私的なものです。その点はご理解いただきたいと思っています。建築ジャーナリズムの片隅にいることに、いささかのためらいを感じているのもそうした理由からです。しかし、そうは言いながらもいつも何か違うものに出会いたいと努力しています。
中原洋(なかはら・ひろし)について
1958年、早稲田大学文学部卒。
コピーライターを経て1977年、米国遊学。
以後、フリーライター。編集者。
1981年「中原編集室」設立。
主に建築、アート、旅をテーマに各誌に執筆。
著書---『意地の都市住宅』1・2巻(ダイヤモンド社
編集---『TOTO通信』(TOTO)
編集---『住まう』 (大阪ガス
編集&共著---『まち作りの知恵と作法』(日経新聞社)

写真は1994年のvol.3の表紙で、ポンピドーセンター前のニキドサンファルとティンゲリー夫妻の彫刻。撮影は中原氏とずっとコンビを組んでいる藤塚光政氏。
TOTO通信」には毎号特集が組んであり、この号は「快楽の空間・・・ホテル」で、憧れの「Saint-James(ジャンヌーベル設計)」や給水塔を利用したホテル、「迷路の中の幻想−−ワッサートルム」の詳細なレポートが載っている。どこぞの昭和初期の給水塔を壊して、そのイメージを残すために、円形のデザインの給水塔を作ると誇らしげに胸を張る行政マンに見せたくなるような特集。
連載で面白いのが「旅のバスルーム」。これは日建設計の浦一也氏の上手なスケッチと文章から構成されているが、TOTO出版から連載を再構成した単行本が出ている。でもやはりオリジナルの雑誌の方が、スケッチが見やすい。
「その人その建築」と言う連載もあり、この回は篠原一男氏の自宅「ハウス・イン・ヨコハマ」。
このところ特集記事がチョッと魅力を欠くようになって来た(個人的好みの問題?)が、とにかく現在の建築関係の広告誌としてはトップクラスの雑誌だと思う。http://www.com-et.com/colonne/totsu/04_07/
次の機会に「INAXレポート」を。