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udf2004-09-27

今回は現役の雑誌。年に2回ぐらいしか出ないみたいなので、忘れた頃にやってく感じだが、印象に残るデザイン、内容もまずまず。編集、頁構成もかなり力が入っていることは分かるが、ややいじりすぎかなあと言った感じがしないでもない。
制作は「電通」で、編集は「2U Associates inc.」、デザインは、「Azone+Associates」。とても綺麗でお洒落な仕上がりになっている。
エレベーターといえば、三菱、日立、東芝と言ったところが頭に浮かぶが、本家は「OTIS]と言うことになる。レム・コールハースの「錯乱のニューヨーク」でも、オーティスの安全装置の実演について、写真入で取り上げている。これにはそれだけのことがあるわけで、エレベータとその安全装置無しに、現在の都市は存在しないわけだから。http://www.otis.com/otis150/section/1,2344,CLI57_RES1_SEC2,00.html

エレベーターはまず大衆に演劇仕立ての見世物として紹介される。
発明者のイライシャ・オーティスは上昇する台の上に乗っている。上下動がどうやら実演の大部分らしい。ところが台が最高点に達すると、助手は短剣をビロードのクッションに乗せてオーティスに差し出す。
・・・中略・・・
エレベーターと同じく、その他の技術的発明にも二重のイメージが孕まれている。成功の裏には失敗の可能性という亡霊が潜んでいるのである。
こうした災厄の亡霊を避けるための手段は、独創的な発明そのものに劣らず重要である。
オーティスはマンハッタン島の未来の発展のライトモチーフとなる一つのテーマを導入した。マンハッタンとは、あり得るが決して起こらない災厄の集積である、というのがそのテーマである。

「錯乱のニューヨーク」からの引用であるが、「あり得るが決して起こらない災厄」と思われていた、超高層の崩壊を目の当たりにした「9.11」以降は、こうは書けないかもしれない。東京はもっと沢山の「災厄」が蓄積されているようにも思える。「錯乱のニューヨーク」は、建築史としても文化論としても面白い。

錯乱のニューヨーク

錯乱のニューヨーク

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)


ところで、オーチスと言えば、さいたま新都心超高層ビルを担当した時に初めて使う機会を得た。それまで経験したのは国内のメーカーばかりだった(勿論、メーカーの選択は設備課の仕事だが)。オーティスの実験タワーが千葉の工場内にあって、車で近づくとその高さにチョッとビックリする。超高速のエレベータの運転状況などが見学できて面白い。目的は見学ではなく、「かご」の完成検査だったが普段経験できないことが多く、どのようなものでも工場見学というのは、とても勉強になり楽しいもの。
この建築で、ホールランタンをデザインしたが、結局最初にデザインしたものが加工できず、デザインを変えざるを得ない結果になった。この時も、出来ない理由を工場で直接確認するために、製作している工場に行ったが、東京近郊の一部に木造の建物が残る小規模の「町工場」的な場所で、職人さん的な雰囲気の人達が働いている工場だった。そこで、加工の方法などを聞きながら、やはり無理かもしれないと納得した。
エレベータのホールランタンはデザイナーとしてはかなり気になる存在で、気合を入れてデザインしたのだが、気合が空回りした感じだった。デザインと製作現場とは切っても切れない関係にある。作れないものを考えてもそれはデザインではなく、上手くいってかろうじて「アート」。