MUJI+INFILL木の家MUJIの「木の家」・SE工法

http://www.muji.net/infill/se/ )は以前から話題になっているように、難波和彦氏の「箱の家」(http://www.kai-workshop.com/ )シリーズを、MUJIがさらにシステム化・ローコスト化して、いよいよ全面的に商品化してきたものと考えて良いと思う。
コンセプト・構造・工法(材料など)・空間構成等々、「箱の家」そのものと言って良い。建築家がハウスメーカーと組んで商品を「開発」する典型的なパターンなのか・・・?インテリアの家具類やキッチンがMUJIの製品でコーディネートされている点は、一般のハウスメーカーとは違うと言えば言えるが。
難波和彦氏はMUJIとの提携に当たって、なんと言っているのかは分からないが、住宅作家としての若手の建築家の仕事が、少なからず影響を受けるような気がしないでもない。
坪単価50万が目安だそうなので、その点でも「建築家+工務店」の立ち向かえるものではない。
構造が「SE工法」と言うだけでも一般的にはコストアップ要素になる。
ポイントの一つは「SE工法」にあると思う。一般的な木造在来工法は「柱梁ピン・ブレース構造」構造壁併用となるが、「SE工法」は仕口に金物を使い「柱梁ラーメン構造」でフレームだけで「大空間」を構成することが可能となる。
構造家播繁氏による工法だと思う。1998年の11月にヒルサイド・フォーラムで「SELL HOUSE 7人の建築家による木骨住宅展」と言う「SE工法」のデモンストレーションがあった。7人とは、押野見邦英・城戸崎和佐内藤廣難波和彦・平倉直子・古谷誠章横河健(敬称略)と言う、よく集めたものだなあ!と思う7人。チョッと長くなるが、その時のリーフレットにある播茂氏のコメントを引用しておく。

「SELL HOUSE(セル・ハウス)」とは、耐震性能が保証され、システム化された木質工法(SE工法)を用いて、建築家が住居空間をデザインし、性能と品質、そしてコストが保証された快適な住まいのプロトタイプを提供するプロジェクトです。
これまでの建築家が手がける住宅は、作品性は高いがともすれば高価で、一般の人たちは工務店に依頼するか、ハウスメーカーの住宅展示場で選ぶか、その選択肢はまだそう広くないというのが現状です。
今回のSELL HOUSE展は建築家の作品展ではありません。実現性をかなり踏まえ、住宅としての性能を確保した提案で、共通しているのは、木骨構造(集成材と接合金物による工業化されたフレームシステム)を用いていることだけです。
この工法を用いて、住宅に関心の高い建築家たちが自由なデザインを展開してくれています。
いわば注文住宅とプレハブ住宅の中間に位置付けられる新しい選択肢をこれから住宅を建てたい人達に提供しようとする試みで、・・・。


その後、押野見氏は、SE工法で「カーテンウォールの家」と言う傑作を作り、難波氏は「箱の家」へと突っ走ることになる。
同じ頃、葛西潔氏は「木箱の家」シリーズ(http://sumai.nikkei.co.jp/style/frontier/08.cfm) で打って出ていたが、結果的には難波氏の「箱の家」に押し切られた感じがする。葛西潔氏の構造も非常に面白いものだ。
状況としては、播氏が言うように「高価な」建築家の作る住宅と、「安い」ハウスメーカーの住宅の2者択一ではなく、渡辺篤志氏の番組やその他の建築家が設計するローコストの住宅を取り上げたTV番組や一般雑誌の住宅特集などによって、建築家の作る「高級住宅」とハウスメーカーの間に、額に汗して働く多くの市民のための住宅を作る一群の建築家の住宅が存在するようになった、と言えるのではないか。
SE工法はOMソーラー(http://d.hatena.ne.jp/udf/20040823)のように、工務店の「囲い込み」的な動きがあるように感じて、余り良い気持ちにはなれないところがある。
技術の開発に要する費用の問題があることは確かだが、技術はオープンであるべきだと思う。まして「建築家」はそうあるべきだと思っている。建築家は「特別利潤」*1を得ようと躍起になる「資本家」であってはならないと、常々思っている。
明日28日に有楽町の「無印」で「木の家」のモデルルームがオープンする。担当した人の話を少し聞くことが出来たが、あくまで競合するのはハウスメーカーと言っていた。果たしてそうだろうか。まあ、そのうち結果は分かるだろう。どちらにしても、居心地の良い家を求めるごく普通の勤労者に、ローコストでセンスの良い家を提供できることが大切なのだから。
MUJIなんかに負けないぞ!と、思う今日この頃。競い合って、住宅の底上げを。

*1:新しい技術を独占することによって得られる利潤