SIGNATURE

udf2004-11-18

ダイナーズクラブの会員向け月刊誌。毎回特集があり、かなり面白いものがある。文化的な質の高さがあり、ダイナーズクラブの会員の質がうかがえる。
今月は「ヴィチェンツァ」の特集で、サブタイトルが「知られざるルネサンス」と言うことであるが、「ヴィチェンツァ」と言えば「パッラーディオ」。
多分「パッラーディオ」と「ヴィチェンツァ」の関係が一般の人には余り知られていないので、「知られざるルネサンス」と言うことになるのだろう(?)。
写真はSIGNATUREの表紙であるが、その説明を引用しておく。写真が小さくてわかりにくいとは思うが、パッラーディオの彫像が写っている。

ヴィチェンツァ市街の中心に位置するバシリカの前の広場に建てられた、建築家アンドレア・パッラーディオの彫像。
左手に製図道具と図面を抱え、まだ見ぬ建築と都市に思いを馳せる。
16世紀、後期ルネサンス時代に登場し古代ローマ建築を徹底的に研究したパッラーディオはヴィチェンツァ近郊に多く残された建築作品と著作によって、その後の古典建築のスタイルに決定的な影響を与えた。

背景のバシリカはパッラーディオの出世作ということだが、生前は一部が完成したのみで、その後40年掛けて完成されたらしい。
もっとも有名なものは、「ロトンダ」*1と呼ばれる、「ヴィラ・アルメリコ」ではないだろうか。ポストモダニズム華やかりし頃だったろうか、磯崎新氏などは良く「ロトンダ」を取り上げていて、それを「引用」した住宅も作っていた。
一般的に「パラッツオ」は、「都市における邸宅」であり、「ヴィラ」は、「郊外の別荘・農業経営基地」と考えられているが、この「ロトンダ」は、パッラーディオ作の「建築四書」では、「パラッツオ」に分類されていると言う。

パラーディオ「建築四書」注解

パラーディオ「建築四書」注解


この辺りの話や、パッラーディオ作品の基礎的なことは、長尾重武氏の「パラディオへの招待」(SD選書)が適当ではないか。
前半はパラディオに関する基本事項およびその後の建築への影響。「コルビジェのロトンダ−ヴィッラ・サヴォワ」なんて言う項目もある。
後半はパラディオの作品30軒が解説されている。パラディオに興味を持っている人は当然読んでいると思うが、入門書としてピッタリ。
パラディオへの招待 (SD選書)

パラディオへの招待 (SD選書)


1980年に「歿後400年記念パラディオ学会」と言うのが、故芦原義信を委員長に、磯崎新氏、槇文彦氏等が委員となって行われたことがあり、その頃はちょっとしたパラディオブームだった。
翌81年1月の「SD」がパラディオ特集で、非常に詳しい記事が沢山載っている。SD選書はモノクロの小さな写真だが、「SD」の特集はカラーの写真や図面が豊富なので、パラディオに興味のある人は、建築学会の図書室などで閲覧するとよいかもしれない。
結局、中途半端な「パラディオ」の話になってしまったが。「SIGNATURE」の特集は面白いのでスクラップしているが、「能」、「お茶」などのほか、ヨーロッパの都市がよく取り上げられる。

*1:中央に円形の平面を持つ建築、と考えて良いのではないだろうか。「ヴィラ・アルメリコ」は中央に円形のホールを持ち、四方に同じ形(ある意味「正方形」)のエントランスを持つものとなっている。
■円と正方形は最も美しく、かつ最も調和した形態であり、他の形態がそこから尺度を得ているものである。−『建築四書』−
■プレハブメーカーにも「ロトンダ」と銘打った商品を出すところがあるのには、ビックリした。http://www.mitsuihome.co.jp/product/rotonda/ googleの検索のトップがこれでは余りに情けない!