Colorful

udf2004-12-11

「ぴあ」が20代後半から30代前半辺りの女性をターゲットにした月刊誌。何でそんな雑誌を買ったかと言うと、別に表紙の二コール・キッドマンの魅力的な笑顔に魅かれた訳ではない。
ところで、本題はこの若い女性向けの雑誌の「この本に感動」と言う書評のこと。取り上げられているのは、安藤忠雄氏の「Le Corbusier ル・コルビュジエの 勇気ある住宅」と言う、「とんぼの本」所謂写真誌的解説本の一種で、結構面白い本が出ている。
早速近所の本屋さんでパラパラ立ち読みしたが、写真が多くて楽しそうな仕上がりになっている。とは言え、コルビュジエについての本としては、「建築家」が読むものでもないような気がしないでもない。「コルビュジエについての本」としてではなく、「安藤忠雄についての本」としては参考になるかもしれない。安藤忠雄氏がコルビュジエをどう解釈しているか、という意味での参考なのではないだろうか。
「建築家」がコルビュジエの解説本として読むには如何なものかと考えるのは、たとえば書評の中で、「ギャルリー・タイセイ」の関係者が書いている部分に、

・・・コルビュジエと言えば「近代建築の5原則」だが、さらに安藤氏は、彼が住宅に多用した手法として「吹抜け」という新たな特徴づけをしており、これは今まで当たり前すぎて誰もが見逃しがちだった視点なので、さすがと言う感じだ。・・・

とあるが、これを、安藤忠雄氏が見たらチョッと気恥ずかしい感じがするのではないかと思ってしまう。少なくとも建築を志すものにとって、コルビュジエの「シトロアン型」の住宅*1は必ず注目しているものであって、その特徴が「トラック型」の吹抜け空間にあることも周知の事実。その後のコルビュジエの集合住宅にくり返し現れてくるものが、この「シトロアン型」住宅に見られる「吹抜け」空間であることも、建築家を志すものの常識なのではないだろうか。
例えば、岐阜の北方の集合住宅で、妹島和世氏や高橋晶子氏のものを見ればその影響は一目瞭然のような気がする(妹島氏のものはフラットタイプの記憶しかないのでチョッと曖昧)。
そのようなことを書評として取り上げているようでは、その他の中身は押して知るべしと言った感じがする。
以前誰かが「読まない本を選択することは重要だ」といっていたが、そう言う意味で「建築家」が読んでいるようなものではないのではないかと思ったわけだが、一人の建築好き、あるいは安藤忠雄氏に興味を持っている者としては、やはり読んでみたいので購入図書リストの上位にランキング。

ル・コルビュジエの勇気ある住宅 (とんぼの本)

ル・コルビュジエの勇気ある住宅 (とんぼの本)


書店で一緒に並んでいた、中村好文氏のフランスのロマネスクを訪ねる「とんぼの本」も面白そうだった。ロマネスクは、特に中庭を取り囲む回廊のある修道院のスタイルには魅かれるものがある。
以前、郵政で女子寮を作るときに、「密かに」ロマネスクの修道院の中庭をイメージしながらデザインした。当然、中庭と柱のある回廊が必要だが、そんなものまともにデザインしたら、あっという間に「設計会議」で「やめた方が良いのでは」ということになってしまうので、「密かに・密かに」「遊びなんかじゃない」と言い訳しつつやってみた。
http://home.h05.itscom.net/udf/works/pickup/images/03_2.jpg
http://home.h05.itscom.net/udf/works/pickup/images/03_4.jpg
似ても似つかないものになったが、それなりにまあ心地よい空間にはなったかな、と・・・。
とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅

とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅


やはり、建築を志すのであれば「ル・コルビュジエ全作品集」は欲しいところ。20数年前に、GAから日本語版が出ている。南洋堂で当時1冊7500円程度していた。全8冊なので6万円ぐらいだっただろうか。当時の一か月分の給料ぐらいの値段だったが購入した。
本は買える時にセッセと買い込んだ方が良い、読めるかどうかは別問題。この本についてはやはり少ししか読めていないが。一時期毎日1作品ずつ読んで写真やパースを1点スケッチすることをやっていたが、やはり力尽きた。
コルビュジエにたくさんの人が親しむことは、建築家にとっても建築文化にとっても良いことだと思うが、プロとしてはそんなにサラッと接するべき「対象」ではない。建築を志す若い人達には、力を込めてぶつかって欲しいものだと思うが・・・。

*1:ギャラリー・タイセイのコルビュジエに関する資料は注目に値する。この「シトロアン型」の住宅も、ギャラリー・タイセイの資料を参照:http://www.taisei.co.jp/galerie/archive/image/cell_042_2.gif