建築デザインの論点:日経アーキテクチャー

udf2005-01-08


「日経アーキテクチャー」の最新号(2005 1-10)の特集「21世紀を読み解く建築デザインの論点」は面白い。横浜の大桟橋の話も面白いが、興味を引いたのは「表参道」の話。
表参道のシンボル的存在だった同潤会の建物が、安藤忠雄氏設計のものに変わるわけだが、黒川紀章氏と浜野安宏氏がコメントを寄せている。
両者とも新しい「青山ヒルズ」*1について批判的なものになっているが、黒川紀章氏の

・・・表参道は、細い裏通りまで含めて魅力があるもの。敷地内に路地のようなすき間を設けて、裏通りに視線が抜けるような工夫が凝らされていればいいと思うのだが・・・

と言う、同潤会跡地のプランを見ての批評は的を得ていると思うが、「動線」ではなくて「視線」と言わざるを得ないのがなんとも・・・。
これは、黒川紀章氏の「日本看護協会ビルhttp://www.arcstyle.com/tokyo/kangokyokai.html 」が、"視線は通れど人は通れず"状態で、表参道の裏道へのアプローチが出来なかったことによるのだろうが。
そもそも、表参道の裏は「住宅地」。そこにスプロール的に小さな商業施設などが入り込んだことから話がおかしくなってきた。東京の街はそうやって「崩されてきた」。「崩される」ことが良いことなのか、そうでないのか難しいところ。下北沢にしても自由が丘にしても、規模の大小が有るにしても同じようなことが言える。
たまに遊びに行くものとしては楽しさが溢れているが、そこに生まれ育ったものはどう感じるか・・・。原風景がただ商売になるからと言うことで、次々壊されていくことをどう考えるか、そんな流れに建築家として乗っていくのが良いのか・・・。勿論、そんな流れと無関係なところに居るから言えることだが(「負け犬の遠吠え」今年も引き続き流行語?「負け犬」は男女同権?「勝ち犬」は幸せか?TVそのもの!)。
記事で見る限り、浜野安宏氏の批評はやや的外れな感じがしないでもない。引用しておくと、

・・・30年近くかけて表参道に蓄積された財産を壊しかねない建築だ。同じ建築家のキャラクターでデザインされた建物が、300mも延々とと続くことが許しがたい。およそ表参道のスケール感に合った建物とは思えない。街のコンテクストを何と考えているのか疑問に思う。設計者の安藤忠雄(氏:本文呼び捨て)には手紙を送って異議を唱えたのだが、デベロッパーの意見をくみとったことを強調していた。・・・

後半の部分は多分その計画内容についてのことなのだろうから、それは良いと思うが、前半の「同じ建築家のキャラクター・・・」と言う部分は明らかにおかしいような気がするが・・・。
浜野氏が評価する同潤会の建築自体が、組織とは言え「同じ建築家のキャラクター」で作られていた訳だし、かの「代官山ヒルサイドテラス」は槇文彦氏と言う一人の建築家のキャラクター抜きには成立し得なかったわけだし・・・。
確かに浜野氏の実績は、フロムファースト、AXIS、パタゴニアOMNI QUARTER、hhstyle.com(安藤忠雄氏設計のannexにも絡んでいるのか?)、QFRONT・・・アルテ横浜で(都市整備公団1992)マイケル・グレイブスを使ったことなどなど、輝くばかりだが。
要するに問題はその内容にあるわけで、そのことは浜野氏ともあろう人であれば十分分かっているのだろうが、何故「同じ建築家のキャラクター云々」などという的外れの批判をしたのか???
兎に角こんな調子で、今回の特集は面白い。
「プロジェクトナビ」もかなり興味津々と言ったところ。特に荒川修作氏に住宅を作らせてしまったディベロッパーが居るのかと思ったら、発注者が荒川修作氏自身だった。これはもうアートなのだろうが、出来上がったら何としても見てみたい。http://www.architectural-body.com/ 実作のガルマン邸の写真を見ると「普通の家」みたいだが・・・。やはり「養老天命反転地」みたいには行かないのかな。まあ、期待しよう!

*1:http://www.mori.co.jp/projects/omotesando/index.html 同潤会の建物の跡地の計画を「森ビル」が命名したらしいが、なんと身勝手なネーミングだろうか。「六本木ヒルズ」の空々しい二の舞はごめんだが、安藤忠雄氏をもってしてもディベロッパーの「醜さ」(言い過ぎ?)を覆い隠すことは出来ないだろう。まあ、出来てみたものを見てみないと、断定的なことは言えないが。〈注〉トップの写真は「森ビル」のサイトから。