小日向のすまい・茶会

udf2005-05-29

茗荷谷の駅から4,5分の場所にある。このあたりは小日向の台地に茗荷谷などの坂があり、バブル期の地上げにもあわず、風情のある雰囲気を残している*1
「小日向のすまい」は「アーキテクト・ファイブ」の堀越英嗣氏の設計。http://www.japan-architect.co.jp/japanese/2maga/jt/jt2004/jt10/works/03.html
茶室は京間の四畳半で、床はガラス、床柱もガラスで普通透明ガラスの間に「ミュージアムガラス*2」が1枚挟み込まれている。後ろに照明が仕込まれているので、不思議なことに床柱が風炉先窓的な明かりを提供している。トップの写真は「お茶会」当日の写真で、とこの花は「芍薬」。床は「二段床(特にこのような名前があるわけではないが)」。何故このようになっているかと言うと、裏に階段があり段裏が使える高さで奥の床を作っているとのこと。
壁の仕上げは「聚楽塗」、天井は「薩摩葦半割」で中央にスリムタイプの蛍光灯が溝の中に直付けされている。
正客の石井和紘氏から軽妙洒脱かつ辛辣(内内なので)な質問が次々と飛び出し、実に楽しい茶会となった。亭主(設計者の堀越氏)の点てる「お薄」がこれまた実に美味しかった。
住宅内部を見学させていただいた後、吹き抜けのあるとても明るいリビングルームでおもてなしをいただいたが、そこにホームシアターの設備があり、DVDの鑑賞会になった。
さわりだけと言って見始めた「フランク・ロイド・ライト」のDVD*3が非常に面白く、110分全部を見てしまった。普通の建築家のDVDであればまあ、作品が並べられてそれなりの評論家がチョッとコメントをつける、と言ったものだと思うが、このDVDはライトの人生そのものに焦点を当ててあり、作品を見るにはやや難があるが、下手なTVドラマなどよりよっぽど面白い、「事実は小説より奇なり」そのもので、例によって石井氏の軽妙洒脱なコメントと驚きの声が・・・。
解説に「ヴィンセントスカーリー*4」が出てきたりしてますます盛り上がっていたが、当時アメリカではミースやグロピウスがドイツからやってきたり、コルビュジエの活躍などで、このままではヨーロッパ建築に席巻されてしまうのではないかという危惧から、ライトを祭り上げたのではないかと言う話になった。DVDの中に出てくる、フィリップジョンソンのコメントも「笑ってしまう」。
知人のインテリアコ-ディネーターがモデルルームでこのビデオが流れていて、お客さんがいない時はつい見てしまったと言っていたが、確かに面白いビデオだ。
そんなこんなで、10時過ぎまで長居してしまったが、素敵な住宅の見学も出来て、楽しいお茶会だった。

*1:東京は「洪積台地」が複雑に入り組んでいて、台地の周縁部が「下町」、台地が武家屋敷などの「山の手」になっていたらしい。槇文彦氏(他)の「見えがくれする都市」に詳しい。それによると「小日向」の台地は、神田上水・江戸川の流れる早稲田の低地を挟んで、酒井家上屋敷尾張の屋敷がある「牛込」の台地と向き合っている。東京は坂の多い複雑な地形の都市なのだ。

見えがくれする都市―江戸から東京へ (SD選書)

見えがくれする都市―江戸から東京へ (SD選書)

*2:旭硝子説明⇒ガラス特有の青みを少なくし、光線の透過率と色の再現性を向上させた板ガラスです。ガラスを透してより明るく、より実物の色に近づいた美しい視界が得られます。http://www.asahiglassplaza.net/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_Template=AGC_Product8&WIT_oid=imFh3FphU91l7jxzffm4cdcYuHidfi0XUPPAFkUe&logined=1

*3:案内サイトから⇒『従来の建築に関する映画は専門的な要素が多かったが、本作はライトの生涯を語ると共に、観ている者に問いかける。
・・・
人の人生がどういう形でその人の創作物に現れるのかを、ライトを通して描写する。』http://www.nowondvd.net/products/franklloyd/

*4:スカーリーは石井和紘氏が「イエール通勤留学」の頃の知り合いで現在も親しくしているらしい。

イェール 建築 通勤留学

イェール 建築 通勤留学

スカーリーはイェール大学を拠点にしていた建築評論家。近代建築 (SD選書)アメリカ住宅論 (SD選書 131)