前川國男でさえも

udf2005-08-15

前川國男といえば、丹下健三を世に送り出した建築家でもあるわけだが、建築の世界では「帝室博物館競技設計」で「日本趣味を基調とする東洋式とする。」と言う設計条件に対して、「国際様式」的な案をぶつけて、「負ければ賊軍」と言い放った建築家としても良く知られている。*1
東京帝大を卒業後、その脚でコルビュジェのもとに向かったことでも良く知られているほどの、「国際主義的近代建築家」の大家でもある。
そんな前川國男でさえもが、「日本趣味」の案を設計競技に出さねばならないほど、戦時中の文化的思想統制は厳しいものだったようだ。

ヒットラー*2ムッソリーニ*3の、建築に対する態度の際立った違いはよく言われるところだが、日本の軍国主義者の建築に対する文化的程度は「瓦屋根を乗せる」程度のものだったようだ。しかし、それに逆らうことは「建築家」として生きて行けないに等しかった。
トップの写真は「建築」1961年6月号「前川國男特集」*4に載っていた「日泰文化会館競技設計応募案」の立面図。木造が条件だったようだが、この図面で見る限り「入母屋」屋根の下の部分がつぶれた感じはかなりアンバランスな感じがする。この時は「師である前川國男を2等に従えて、」丹下健三が1等になっている*5
このあたりの事情はいろいろな記録があるが、比較的読みやすいのは「SD選書」ではないかと思う。


戦争と言う狂気は、全てが人間の理性や知性と相反する。今日は60年前に、敗戦を迎えた日だが、テレビで原宿を歩く若者に、今日が何の日であるかを聞いたところ、60%の若者が答えられなかったといっていた。奇しくも、小泉政権の支持率が59%だと言う。なんとなくその間に相関性が有るような気がしないでもない。「無知は罪」であると誰かが言っていたが・・・。
■「無言館」と言う、戦争で亡くなった画学生の作品を集めた美術館がある。以前、NHK日曜美術館でも取り上げていた。また、別の番組で取り上げるようなので紹介しておく。
無言館のことhttp://blog.goo.ne.jp/sque と言うblogからの引用。

NHKの「にんげんドキュメント」で、
『最後の一枚 〜戦没画学生・いのちの軌跡〜』が放送されました。
見落とされた方;
NHK衛星第2放送『BSアンコール館』:8月19日(金)午後5時15分〜
NHK総合テレビ:8月25日(木)午前1時15分〜(24日・水曜深夜)

*1:ちなみにその時の1等案は現在上野に建っている。設計は「原美術館http://www.haramuseum.or.jp/」の設計者でもある「渡辺仁」、変わり身の速さは信じられないスピード!

*2:「シュペアーやリーフェンシュタールヒトラーの悪魔性 には無知であり、一方でその『人間的カリスマ性』的魅力への信奉者だった。」と言われる、シュペアーに造らせた「古典主義的」建築への嗜好。

*3:サンテリアやジョゼッペテラーニ、アダルベルト・リベラなどに見られる「未来派」的近代建築に対する嗜好

*4:この特集は当時の雰囲気が感じられて面白い。神田の「明倫館」で古本を購入。

*5:BRUTUS Casa 丹下健三DNA」参照http://www.brutusonline.com/casa/index.jsp