穹+

udf2005-05-26

大体、パソコンで「穹」の字が出てこない。これは「ヤマギワ」の広報室が出しているれっきとしたヤマギワの「広報誌」であるらしい。昨日のsedusの展示会で取締役のY氏が案内してくれたが、その時企業誌の話になりこの「穹+」をいただいた。
独立した後しばらく手にしていなかったが、流石に質の高さを保持しているように見受けられた。
創刊は1997年4月、まさしく世紀末だった。今手元には1号から7号があるが昨日いただいたものは9号なので8号だけが手元にはない。
「穹+」は三宅理一氏が編集長で、編集顧問が伊藤滋氏で作られている。何故、伊藤滋氏が顧問なのかよく分からないが・・・。もっと分からないのが「穹+」と言うネーミング。創刊号に伊藤滋氏+三宅理一氏の連名で「創刊の辞」があるので、その部分を引用しておく。

本書のタイトル「穹+」は、その文字の形からも解るように、大地から天空を見上げた状態を指しています。かつて遊牧民たちが、何の目印もない草原の中で、天界の星辰を頼りにして動いていたように、私たちも、この不確かさと不安とが支配する時代に、文明の光という道案内を得て時代の荒波を渡っていこうではありませんか。

繰り返しになるが、この雑誌が創刊された時は「世紀末」だったので、このような名前を考えたのだろうと思うが、今はもっと不安がつのる混沌とした「時」のようにも思える。
印象に残っている1冊は、杉浦康平氏の「文字とかたちの図像学」と言う対談が載った2号だろうか。本当に杉浦康平氏は「濃い」*1

*1:創刊号から第9号までの特集と建築家+αをまとめておく。
創刊号:際(きわ)・安藤忠雄
2号:顕(けん)・槇文彦氏・「斑なす混乱から、たち顕れるもの=杉浦康平氏+鷺沢氏
3号:渦・磯崎新
4号:彷徨・伊東豊雄氏・「精霊彷徨」=水木しげる+吉本ばなな
5号:奥(奥が見えない次代、あるいは奥がなくなった時代)・内井昭蔵
6号:燦(漆黒の中の輝き)・妹島和世氏・田中一光
7号:南方系・内藤廣
8号:色・山本理顕
9号:韃靼譚(だったんたん)「疾風、怒涛の時代」・隈研吾氏(暗闇坂の「宮下」が載っている);「疾風怒濤=シュトルムウントドランク(Sturm und Drang )⇒18世紀、ドイツにおいて、それまでの見せかけの権威による啓蒙主義に反対し、人間性の解放を主張したゲーテやシラーが中心となった文芸運動(「昭和の子」というサイトより)。30年ほど前、「君たちは、疾風怒濤の時代に生きることになる」という祝辞をもらった記憶がある。「時代が大きく動く」時だという意味だったが、決して良い方向に動くことはなかったようだ、あるいは、動かすことができなかった。